暮らしの枠組みは、住宅・家族・仕事のトライアングルのなかで形づくられる。住まいの「梯子」は、家族・仕事の「梯子」に連結することによって、人生の軌道に「かたち」を与え、ライフコースの社会標準を生みだす。「普通の人生」というような人生が実在するのかどうかという問いがあるとすれば、それへの回答は慎重さを求められる。しかし、住宅所有が普及するにつれて、雇用を確保し、結婚して子どもをもち、より広い住宅に住み替え、世帯の収入が増え、そして持家を手に入れ、資産を蓄え……といった経路を「普通の人生」としてイメージする人たちが増大した。
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住宅取得は結婚・出産・収入増などのライフイベントに関係し、暮らしの「梯子」に節目をもたらした。住まいの私有は私的行為であるだけではなく、社会変化を織り上げる触媒として機能する。日本の二〇世紀後半において、住宅所有に向かう人たちは社会のメインストリームを形成し、その「流れ」をつくりだした。めざましい経済成長のもとで中間層が増え、持家取得の可能な世帯が増大した。大都市に向かう人口移動と世帯数の増加は、膨大な住宅需要をもたらし、住宅建設の伸長に結びついた。持家の大量建設は経済をいっそう刺激し、中間層の住宅取得をいっそう促した。住宅・土地価格は上昇し続け、キャピタルゲインをともなう住宅所有は資産形成の有力な手段であった。多くの世帯が持家を求め、メインストリームの「流れ」に合流しようとする傾向が社会変化の方向性を設定した。